ぬしさまへ/ねこのばば


畠中恵「ぬしさまへ」「ねこのばば」

早速2冊読み終えてしまいましたよ。
まずは「ぬしさまへ」から。
これは・・・別名、仁吉の巻と呼んでもいいですか。最初の表題作「ぬしさまへ」は、いきなり仁吉宛ての恋文話から始まり、また「仁吉の思い人」では、普段女なんぞまったく見向きもしない(妖怪ですから)彼が、文字通り「千年の恋」をしていたとはね! 恐れ入りましたよ。
千年想い続けた相手が別の人を追い続け、それをそばで黙って見守り続けた挙げ句、相手は天に昇ってしまい、残された忘れ形見を守り続ける・・・とはまあ、何とも人間くさいではありませんか。
そんなわけですみません、ころっとやられてしまいました。何なんでしょう、この妖は。(笑)
「空のビードロ」は、不幸な兄・松之助サイドの物語。「しゃばけ」の時、兄がどうしていたのかが描かれています。しかし読んでいて切なくなりました。本当にいい人ですね、兄さん。長崎屋で是非とも幸せを見つけてほしいです。


次は「ねこのばば」。
出ましたね、何やらアクの強い坊さん、寛朝。「しゃばけ」では名前しか出てこなかった人ですが、実に濃いです、この坊さん。佐助・仁吉と同格の人が登場しましたねえ。見越入道じゃ強すぎるし、屏風のぞきじゃ弱すぎますからね。今後、いろいろと絡んできてほしいです。
「産土」・・・これはかなりホラーでしたね。東亰異聞を彷彿させました。(時代違うけど)
佐助は仁吉と違って、最初から若だんなに特別な思い入れがあったわけではなかったのですが、今ではすっかり愛着がわいたようですね。まあ妖といえども本性は犬なわけで、人に懐きやすいたちなのではないでしょうか。
「たまやたまや」、思わずぐっと来てしまいました。お春の嫁入り話なのですが、当のお春はほとんど出てきません。それにも関わらず、彼女の想いが読んでいて伝わってきて、見せ方が実に上手いなあと思いました。それでいて、ちゃんとお約束の妖怪手代オチもついてきて、いろいろとおいしい話でした。

「しゃばけ」は登場人物たちの顔見せ的な色合いが強かったように思います。もちろんそれはそれで面白かったんですけどね。
しかしこの2冊の短編集は、いろいろな人たちに焦点を当てていたので、すっかり為人を把握することができました。初めは佐助と仁吉の違いさえ、あんまりはっきりしていなかったくらいですからね・・・。(佐助=力持ち、仁吉=色男、くらい)
その分、妖怪がらみでない普通(?)の殺人事件も増え、「妖怪も出てくるミステリ」な感じになりつつあるのがちょっともったいない気もします。
せっかく大勢妖怪がいるのだから、この環境でなければ起こりえない物語を多く希望したいところ。とはいえ、それもなかなか難しいでしょうけどね・・・。

文庫刊行分はすべて読み終えてしまったので、あとは単行本だけか・・・。余裕があれば図書館で借りてきたいと思います。あと、児童書から若だんなの幼少時代のが出ているので、これは手に入れたいなと。

Comment

2007.06.16 Sat 18:36  |  

幼少時代本、早速今日の記事に上げました。絵と文が実にマッチした絵本です。

軽妙な文章で、それでいて心に染み入るような人物描写がすばらしいと思います。すっかりハマってしまいました。(笑)

  • #XggCOD8.
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2007.06.15 Fri 21:39  |  

若旦那幼少時代本の情報をよろしくです。

結局は文章力ですね。
軽い物を重厚に、重い物を飄々と、複雑なものを単純に、単純なものを複雑に、そして、すべては流れよく。
さすがは都築のお弟子さんです。

  • #FemA5fPA
  • 福槌屋の旦那
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